北京高裁、「三星」商標に対するサムスンの異議申立てを認めず

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韓国のサムスン(三星)電子が、中国のエレベーター製造会社「揚州三星電梯」を商標権侵害で訴えた裁判で、北京高裁が18日、法的根拠に乏しいとしてサムスン側の訴えを退けた。19日付で新華日報が伝えた。

「揚州三星電梯」は中国の民間エレベーター製造会社。2006年にドイツ企業AECと提携し、国家工商総局の商標評価審査委員会に「AEC三星」「AEC THREE STARS」の登録申請を行った。ロゴのデザインも、サムスンと同じ楕円形が使われた。公示期間中の09年と12年、サムスンは同委員会に異議を申し立てたが、認められなかった。

同委員会は調査の結果として、揚州三星は98年に「三星」「THREE STARS」の社名とロゴを登録したが、サムスンが登録したのは99年だと指摘。その上、両者の間には明らかな違いがあり、混同や誤解が生じることはあり得ないと結論付けた。

これを不服としたサムスンが今年初めに北京高裁に上訴したが、同高裁は18日、商標権の侵害にはあたらないとの判決を言い渡し、サムスン側の敗訴が決定した。

FOCUS ASIAより引用

photo credit: nan palmero via photopin cc

中国揚州にある三星エレベータ社(三星电梯有限公司/Three Stars Elevator Co.,Ltd.)が中国で商標登録出願を行ったところ、韓国サムスン電子が登録異議の申立てを行った。しかしながら、サムスン電子の主張は認められず、北京高裁に上訴したが、やはり認められなかったという報道です。

異議申立ての理由は、ロゴに同じ楕円形を使った点が似ているから、サムスン電子の商標との間で混同や誤解が生じるということであったようです。

問題となった商標を検索してみる

中国商標局のウェブサイトで、三星エレベータ名義の商標登録を検索してみると、11件がヒットします。ただし、いずれも2006年の出願であり、ニュース記事にあるような1998年の出願は含まれていませんでした。

この11件の中に、異議申立てに関する記録が含まれているものが2件ありました。この2件が今回問題になっている登録商標であると考えられます。


商標登録 第5460799号samsung-1-mark

指定商品:货车千斤顶; 可移动人行道; 电梯(滑雪运送机除外); 移动楼梯(滚梯); 升降设备; 电梯(升降机); 可移动楼梯(自动扶梯); 自动梯;

【仮訳】貨物ジャッキ;可動歩道;エレベータ(スキー輸送機器を除く);移動階段(エスカレータ);昇降設備;エレベータ(昇降機械);可動階段(可動手すり付き階段);自動はしご;


商標登録 第6244082号samsung-2-mark

指定商品:动物剪毛机; 铰盘机;

【仮訳】動物毛刈り機;ドリル?

 


いずれも「三星」の文字が含まれています。また、横長の楕円形内に白抜きでアルファベットの文字が表示されています。ただし、白抜き文字は、「AEC THREE STARS」と「THREE STARS」です。AECは、ドイツの提携先の略称のようです。

サムスンの著名商標

samsung-logoサムスン電子の商標はこちらです。皆さんもよくご存じの商標であり、右肩上がりに傾いた青の楕円形の中に白抜きでSAMSUNGと表示されています。

多くの日本人が知っている商標であり、日本では著名商標と言ってよいでしょう。この商標が中国ではどの程度まで浸透しているのかはわかりませんが、サムスン製品が低価格を武器にしてきたことや、テレビ分野では日本市場を攻略できなかったことなどを考慮すると、日本と中国で大きく事情が異なるということはない気がします。

そんな日本人の感覚でいえば、両者の間に混同が生じるというサムスン電子の主張には、やはり無理があるというのが正直なところです。

皆さんは、中国の三星エレベータの商標を見て、韓国のサムスン電子、あるいは、その関係会社かもしれないと思いますか?

おそらく思わないのではないでしょうか。

思うかもしれないという方がいたとしても、日本には「三星」という名前の会社が多数存在しているという事実を知らさせた後であったなら、どうでしょうか。テレビ、スマートホンなどの分野を除いて、「三星」=「韓国のサムスン電子」という公式は、頭の中で成立しなくなっているはずです。

混同が生じるのか

今回は、中国での商標登録に対する異議申立てであり、中国の法律に基づいて、中国の需要者の認識を基準に判断されるべきものです。

例えば、中国では、日本に比べて、英語に慣れ親しんでいない人が多く、英単語は絵として認識されると言われています。このため、日本人なら絶対に混同しないような全く違う意味の単語であっても、綴りが少し似ていれば、混同が生じる関係にあると判断されることが少なくありません。

そのような違いはありますが、大雑把にいえば、中国と日本の商標登録制度に大きな差はなく、また、サムスンブランドの認識にも大きな違いはないのではないかと推測されます。

そこで、以下では、日本でならどうなるのかという問題として考えてみたいと思います。

「三星」の識別性

「三星」をググれば、直ぐにわかりますが、日本には「三星」という名前の会社がたくさん存在しています。例えば、三星海運、三星商事、三星ダイヤモンド工業、三星社、三星エステート、三星工業…。詳しく調べた訳ではありませんが、いずれもサムスン電子との間に資本関係などはなさそうです。

星が三つというような言葉ですから、沢山あって当たり前だと思います。つまり、「三星」は、もともと識別力が弱い商標なのです。このような商標は、ある分野で有名になったからといって、他の分野で他人が使用した場合に直ちに混同が生じるとは言えません。

例えば、「ホンダ」が自動車分野でいくら有名になったとしても、他の分野でホンダが使われた場合に、本田技研工業と関係のある商品であると需要者が認識し、出所の混同が生じるとは言えません。これに対し、「日産」のような造語は事情が異なります。「日産」が自動車の分野で有名になれば、他の分野でも「日産」を使えば、日産自動車と何らかの関係があると需要者は認識し、出所の混同が生じるのが普通でしょう。「ユニクロ」のような造語も同じです。

楕円形の図形の識別性

楕円形の背景というのは、ありふれており、識別力が強いとは言えません。しかも、サムスン電子の著名商標の楕円形は、傾いているのに対し、中国の三星エレベータの楕円形は傾いていません。さらに、白抜きで表示されている文字も「SAMSUNG」と「THREE STARS」であって全く異なっています。

つまり、共通項はあるとしても、混同が生じるような関係であるとはいえません。

 まとめ

日本の場合で考えれば、商標を全体として見れば、サムスン電子の著名商標との間で混同が生じるはずがないというべきでしょう。

「三星」の文字が含まれていることや、横長の楕円形の中に白抜きで英単語を表示するという構成を有しているという程度の共通性は、混同が生じる理由にはらないでしょう。

しかも、テレビやスマートホンなどのサムスン電子の得意分野であればともかく、エレベータやエスカレータの分野であれば尚更です。

おそらく、中国でも事情は同じことでしょう。それゆえ、サムスン電子の主張は認められなかったということだと思います。サムスン電子は、異議申立てを行っただけでなく、北京高裁に上訴していることから、勝ち目があると考えていたようですが、なぜそういう判断になったのかは疑問です。

 

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