人気餃子店の店名を巡る商標問題

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人気餃子店の店名めぐる法廷闘争“決着” 「丸正餃子」と「餃子の丸正」和解成立

 一口サイズの薄皮ギョーザが人気の大阪府大東市の「丸正(まるしょう)餃子店」が、よく似た店名で営業され、利益を侵害されたとして、ギョーザ専門店「餃子の丸正」を経営する「丸正」(同府門真市)を相手取り、表示の使用差し止めと6500万円の損害賠償を求めた訴訟で、丸正側が丸正餃子店に商標権を譲渡し、4月以降「中華丸正」の店名で営業するなどの内容で大阪地裁で和解が成立したことが12日、分かった。昨年12月8日付。

関係者によると、和解内容は丸正側が平成25年7月に登録した「餃子の丸正」の商標権を丸正餃子店に有償で譲渡。今年3月末まで「餃子の丸正」の店名使用を認め、4月以降は「中華丸正」に改称するという。

訴状によると、丸正餃子店は昭和44年から営業。中身が透けるほど薄皮の一口サイズが特徴で、52年ごろから1日約600~1千人前が売り切れるようになった。週末は2~3時間待ちの行列ができるほどの人気店となり、たびたびメディアでも紹介されている。

一方、丸正は遅くとも平成22年3月には「餃子の丸正」の表示で同府門真市で店舗を営業。百貨店の催事などにも不定期に出店し、薄皮の一口ギョーザを提供している。丸正餃子店には20年ごろから「店を間違えた」「紛らわしい」というクレームが寄せられていたという。

丸正餃子店の長谷川晶之社長は和解成立を受け、「お客様に迷惑をかけてしまっていたので、商標権を譲渡してもらう形で決着がついて安心した。今後、店を間違えられることがなくなればいいと思う」とコメント。一方、丸正側の代理人弁護士は「納得のできる和解ができた。店の名前は変わるが、今後も営業を続ける」としている。

Yahoo!ニュースより引用

店名が類似・・・大阪府大東市の「丸正餃子店」が門真市の「餃子の丸正」を表示の使用差し止め求め提訴(日刊時事ニュース)

photo credit: jetalone via photopin cc

 

「丸正餃子店」と「餃子の丸正を経営する丸正」といわれても、話がややこしくて混乱してきます。

大東市の人気店「丸正餃子店」を経営しているのが有限会社丸正餃子店(A社)です。
一方、門真市で「餃子の丸正」を経営しているのが株式会社丸正(B社)です。

ともに同じ中華料理店「丸正」からのれん分けを受けたお店ですが、A社の「丸正餃子店」は、昭和52年頃にはすでに餃子専門店として人気店であったのに対し、B社は、5年ほど前に「中華料理丸正」から「餃子の丸正」に店名を変更しています。

このニュースは、B社が「餃子の丸正」を店名として使用し始めたことにより、A社の餃子店と間違える人が増えたので、A社がB社に損害賠償を求めて提訴したところ、B社が店名を変更することで和解が成立したというものです。ここまでは、よくある話のようにも思えます。

商標権を巡る問題

ここで注目したいのは、B社の「餃子の丸正」の商標権をA社が買い取ることで和解が成立したという点です。特許電子図書館(IPDL)で検索すれば、直ぐにわかるのですが、A社は「丸正餃子店」という商標権(5330950号)を有し、B社は「餃子の丸正」という商標権(5598915号)を有しています。このB社の商標権をA社が買い取ることで和解したわけです。

2つの商標が相紛れるような関係にある場合、これらの商標は類似するといいます。商標法には、他人の登録商標と類似する商標について登録を受けることはできないと規定されています。それでは、この事案の場合はどうだったのでしょうか。

まず最初に、B社が平成19年4月に「金太郎餃子の丸正」について出願(商願2013-9026)を行って、平成20年8月に登録(第5598915号)を受けています。

次に、A社が平成22年2月に2件の商標を出願しました。1件目が「丸正餃子店」(商願2010-10881)であり、2件目が「餃子の丸正」(商願2010-10884)です。「丸正餃子店」については、平成22年6月に登録を受けることができましたが、「餃子の丸正」については、拒絶査定を受け、不服審判も請求しましたが、それでも認められず、登録を断念しています(不服2010-22890)。

A社の出願商標「餃子の丸正」が拒絶された理由は、B社の登録商標「金太郎餃子の丸正」と類似するというものでした。A社の出願商標「餃子の丸正」は、「餃子」の文字と「丸正」の文字とを格助詞「の」で結合したものであるから、「マルショウ」又は「マルセイ」の称呼を生じさせる。同様にして、B社の登録商標「金太郎餃子の丸正」からも同じ称呼が生じる。その結果、両者は類似するというのが拒絶の理由です。

その後、B社が「餃子の丸正」について平成25年2月に出願(商願2013-9026)を行って、平成25年7月に登録を受けています。今回、A社は、この商標権を買い取ったというわけです。

なぜ「丸正餃子店」は登録できて「餃子の丸正」は登録できなかったのか

A社の出願商標「丸正餃子店」は、拒絶理由通知を受けることなく登録されているため、「丸正餃子店」が「金太郎餃子の丸正」と類似すると判断されなかった理由は、審査を担当した審査官にしかわかりません。

おそらく、「丸正餃子店」は「マルショウギョウザテン」と一連にしか称呼されず、その中から「丸正」のみを分離して認識し、「マルショウ」又は「マルセイ」と称呼されることはないと判断したと考えられます。

一般論としては、その逆の判断も十分にあり得ます。つまり、「丸正餃子店」は、「丸正」と「餃子店」に分離して認識することができ、その結果、「丸正餃子店」から「マルショウ」又は「マルセイ」の称呼が生じると判断される可能性もあります。

しかしながら、実は、社名と一致する商標は、簡単に登録を受けることができるという傾向があります。もちろん、他人の登録商標と同一であれば、社名といえども登録を受けることができませんが、普通ならば他人の登録商標と類似すると判断され拒絶されるはずのケースでも、社名と一致している商標であれば、案外、簡単に登録されます。おそらく、社名が登録できなければ困るであろうという配慮と、社名と一致していれば、その一部だけを抜き出して称呼されることはないという判断ではないかと考えられます。

A社の名称は「有限会社丸正餃子店」であり、その出願商標「丸正餃子店」は、出願人の名称から法人格を示す「有限会社」を削除しただけのものであったため、簡単に登録されたと推測されます。

これに対し、「餃子の丸正」については、そうは行かなかったということなのでしょう。

「餃子の丸正」についてB社が出願したのは、A社の出願よりも後だったのですが、出願人がB社である限り、自身の登録商標「金太郎餃子の丸正」が障害になることはありません。

「餃子の丸正」の商標権者は、なぜA社でなくB社なのか。

商標法は、先に出願した者に対し登録を認める先願主義を採用しています。

全国的に有名な商標について、無関係の他人が出願すれば、審査官は拒絶します。しかしながら、一地域で有名であるという場合、審査官は無関係の他人の出願を拒絶することが難しく、先願主義に従って粛々と登録することになります。

この事案を後から振り返ってみれば、商標「金太郎餃子の丸正」について出願を行った時点で、B社は、「丸正」という餃子店の名称に関し、商標法上において確固たる地位を築いていたことになります。

昭和52年頃には人気店であったというA社が、もし「餃子の丸正」について、先に商標登録を受けていたとすれば、何も問題は起きなかったでしょう。また、仮に問題が起きたとしても、直ちに解決できた可能性が高かったといえます。

会社名や主力の商品名についてさえ、商標登録を行っていない会社は、多いはずです。ビジネスで用いる大切なネーミングやマークは、商標登録しておくことが重要であることを痛感させられる事案ではないでしょうか。

商標登録といえば、大企業のためのものだと思いがちですが、飲食店や小売店であっても、大切なネーミングやマークについてはしっかりと商標登録を行っておくべきです。

 

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