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不使用取消審判

商標を登録しようとして調査したところ、既に他人が商標登録していたというケースは少なくありません。しかしながら、他人が商標登録を受けていたとしても諦めるのはまだ早いかもしれません。

他人の商標登録を取り消すことができれば、商標登録を受けることができるようになります。他人の商標登録を取り消す方法として、実務上、最も活用されているのが不使用取消審判です。

1.活用場面
2.取消条件
3.事前準備
4.審判請求のタイミング
5.審判請求された場合
6.審判請求の防止策

1.活用場面

不使用取消審判は「何人も」請求することができますが、費用と時間がかかる手続であるため、趣味で請求する人はいません。

不使用取消審判が活用される場面は、自社が商標登録を受けるに当たって、他人の商標登録が障害になっているという場合です。つまり、他人が先に商標登録を受けている場合に、それと同一又は類似の範囲において商標登録を受けることを希望する者が不使用取消審判を請求します。

2.取消条件

他人の商標登録を取り消すには「商標権者等が日本国内において3年間継続して指定商品又は指定役務について登録商標を使用していない」という条件を満たしていることが必要です。

長期間使われていない商標は、登録を維持して保護する価値がなく、むしろ他人の商標選択の余地を狭めていることから、このような商標登録の取り消し手続が認められています。従って、この条件を満たしていなければ、不使用取消審判を請求したとしても、他人の商標登録を取り消すことはできません。

(1) 3年間継続して使用していないこと

直近の3年間に登録商標を一度も使用していないことが条件です。そうすると、商標登録から3年が経過していない場合、取り消すことは不可能です。このため、まずは他人の商標がいつ登録されたものであるのかを確認する必要があります。

(2) 商標権者等が使用していないこと

商標権者等には、商標権者だけでなく商標権者から使用許諾を受けた者(使用権者)も含まれます。このため、商標権者自身が使用していなくても、使用権者が商標を使用していれば、取り消すことができません。

例えば、親会社が商標権者で、その子会社が商標を使用している場合、通常は子会社が使用権者に該当し、商標登録を取り消すことはできません。このため、商標権者ではない者が商標を使用している場合、商標権者と商標の使用者の関係性を調べる必要があります。

(3) 指定商品又は指定役務に登録商標を使用していないこと

指定商品又は指定役務に登録商標を使用していなければ取り消されます。ここで注意すべきは、類似範囲における使用では取り消しを免れることはできないという点です。

例えば、指定商品又は指定役務と類似する商品又は役務についてだけ使用していた場合や、登録商標と類似する商標だけを使用していた場合には、取り消しを免れることはできません。

この場合の同一性の判断は、比較的厳格であり、商標をアレンジして使用している場合には、使用しているにもかかわらず、取り消される場合があることに注意する必要があります。

3.事前準備

(1)商標の使用状況の調査

まずは商標権者等による商標使用の有無を調査する必要があります。他人の不作為(使用していないこと)の証明は極めて難しいことから、悪魔の証明と呼ばれています。それでも、可能な範囲で使用の有無を調査し、使用していない可能性が高いことは確認しておく必要があります。

(2)先に商標登録出願を行う

不使用取消審判を請求し、他人の登録商標を取り消すことができたとしても、他人が再び商標登録出願を行って、商標登録を受けたとすれば、わざわざ審判請求を行った意味がなくなってしまいます。このため、他人よりも先に、つまり、不使用取消審判を請求する前に、商標登録出願を行っておく必要があります。

4.審判請求のタイミング

不使用取消審判を請求する前に、自社が商標登録出願を行っておくべきであることは既に説明しました。それでは、自社の出願後、どのタイミングで不使用取消審判を請求することが最適といえるのか。弊所では以下の3つの時期のいずれかで請求することをお勧めしています。

(1) 出願日から約2ヵ月後に請求する

(2) 出願後すぐに請求する

(3) 拒絶理由通知後に請求する

どのタイミングで不使用取消審判を請求するのが最適であるのかは、自社の状況や希望によって異なります。以下では、各タイミングをお勧めする理由について説明します。なお、ここでは、一般的なケースを前提として請求のタイミングについてご説明しています。譲渡交渉が絡むケース等の特殊な場合は、別途、請求のタイミングを検討する必要があります。

(1) 出願日から約2ヵ月後に請求する

同一又は類似の範囲において他人(第三者)が先に出願していた場合、不使用取消審判が成功すれば、その他人が商標登録を受けることになります。この場合、この他人の登録が新たな障害になり、自社の出願は拒絶されてしまいます。これでは不使用取消審判にかけた時間や費用が無駄になるだけでなく、自社にとって不利益となる他人の商標登録を手助けするという散々な結果になってしまいます。

事前に十分に調査すればこのようなリスクをなくすことができると思われるかもしれませんが、残念ながらいくら調査したところで、このリスクはゼロにできません。出願情報の公開には約2ヶ月のタイムラグがあり、出願日から約2ヶ月が経過しなければデータベースに反映されません。この期間をブラインド期間と呼んでいます。つまり、自社の出願前の約2ヵ月間における他人の出願は、そもそも調査では発見できないのです。

このため、出願日から約2ヵ月が経過した時点で再調査し、同一又は類似の範囲において他人が先に出願していないことを確認した上で、不使用取消審判を請求すれば、無駄な不使用取消審判を請求し、自ら墓穴を掘るというというリスクを回避できます。このため、基本的にはこのタイミングで不使用取消審判を請求することをお勧めしています。

(2) 出願後すぐに請求する

一刻も早く権利化したいという場合は、このタイミングで不使用取消審判を請求することをお勧めします。ブラインド期間中における他人の出願はそれほど頻繁に起きることではありません。このため、リスク承知で早期の権利化を目指す場合、出願後すぐに不使用取消審判を請求することも選択肢の一つになります。ただし、不使用取消審判の結果が出るまでは最短でも約7ヶ月程度はかかります。このため、自社の出願が登録されるまでには、早くても1年程度の時間がかかります。

(3) 拒絶理由通知後に請求する

商標の類否判断は審査官によって結論が異なるような微妙なケースもあります。このような場合には、拒絶理由が通知された後に不使用取消審判を請求することをお勧めします。拒絶理由が通知されることなく登録が認められれば、不使用取消審判を請求する必要はなくなるからです。

拒絶理由通知を受ける可能性はあるが、その可能性が高いとはいえないようなケースであれば、このタイミングで請求することをお勧めします。ただし、不使用取消審判の請求時期が遅くなるため、自社の出願の登録は遅れてしまうことになります。

5.審判請求された場合

ここまでは、不使用取消審判を「請求する側」の視点から解説しましたが、以下では「請求された側」の視点から説明します。

貴社の商標登録について不使用取消審判が請求された場合、特許庁から貴社に通知が届きます。この通知が来てしまった場合には、貴社がその登録商標(又は登録商標と社会通念上同一の商標)を3年以内に使用していた事実を証明しなければなりません。ここで使用の事実を証明できれば、貴社の商標登録が維持されます。一方、使用の事実を証明できなければ、商標登録は取り消されてしまいます。

また、証拠が怪しい(登録商標と違う商標を使っている、本当に3年以内の使用かどうか明確ではない等)場合は、請求人側(相手方)がその証拠について意見を述べることもできます。これについて権利者側が更に意見を述べることも可能です。このような議論を経て、特許庁の審判官が最終的に判断を下します。

この「使用事実の証明」は権利者本人が行うこともできます。しかしながら、非常に専門性が高い手続であるため、知財部等の専門部署でもない限り、適切に対応することはまず不可能ですから、弁理士等の専門家に依頼する必要があります。

6.審判請求の防止策

上記の通り、「使用事実の証明」さえできれば貴社の商標登録は維持されます。このため、万が一、不使用取消審判を請求されても使ってさえいれば大丈夫と思われるかもしれません。

しかしながら、「使用事実の証明」を弁理士に依頼するとなると費用がかかります。そして、提出する証拠を準備するのには時間と手間がかかります。さらにいえば、たとえ不使用取消審判に勝ったとしても、貴社の商標登録が維持されるだけです。つまり、得るものは何もありません。これでは勝った気もしません。

したがって、「不使用取消審判」は請求されないように普段から「大々的に」登録商標を使用することを心がけることを強くお勧め致します。そのポイントは以下の3つです。

(1) 商標として使用する

商標の使用とは「指定商品・役務についての使用」をいいます。つまり、指定している商品・役務の目印となるような形で使用していることが大前提です。

例えば、指定した商品が「被服」である場合、「かばん」の広告について商標を使用していたとしても、これは登録商標の使用に当たりません。また、商品・役務が不明確な形での使用(例えば、社名の商標を名刺に掲載する等)も、登録商標の使用に当たらなでしょう。

(2) インターネット上で使用する

不使用取消審判を請求するのにも少なくない費用がかかります(最低でも特許庁に対して55,000円支払う必要があります)。このため、不使用取消審判を請求する側も負け戦は避けたいので、ある程度下調べをするのが一般的です。

そこで、まず調べるのがインターネットです。このため、自社のホームページ上で登録商標を使用していれば、「不使用取消審判を請求しようとしている者」の目に留まる確率は非常に高いでしょう。一方、自社の付近で配布しているビラやチラシにだけ使用しているとなると、「不使用取消審判を請求しようとしている者」が気づかないおそれがあります。こうなると、「使っていない」と思い込んだ方が不使用取消審判を請求してきて対応に追われるリスクが高まります。

したがって、自社のホームページ等の「探せば簡単に発見できる場所」で登録商標を使用しておく方が良いといえるでしょう。

(3) 登録商標と「完全同一」の商標を使用する

不使用取消審判では、登録商標の使用を証明できなくても、「登録商標と社会通念上同一の商標」の使用を証明することによって取消を免れることができます。

しかしながら、「社会通念上同一の商標」が具体的にどのような商標を指すのかは、その登録商標ごとに判断されるものであり、その判断は専門家でも困難な場合が多いというのが実情です。

このため、「不使用取消審判を請求される」のを避けたいのであれば、登録商標と『完全同一』の商標を使用することで、この点について争いのない状態にしておくのがベストといえるでしょう。

作成2016.10.17(HR)
追記2016.11.30(HR)
追記2017.01.17(HR)

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