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知財担当者への手引き2 ~商標・権利の維持管理編~

 

                                            記事公開日:2023年6月12日

「知財部」とは、知的財産権の管理業務を行う部門です。知財部がある会社では、商標権の管理は知財部が行うことが多いです。

しかしながら、知財部がある会社は大手メーカーに限られます。弊所でも、知財部のご担当者様からのお問い合わせと比べると、他の業務と兼任されている総務部・人事部の方などからご連絡を頂くことが圧倒的に多いのが実情です。

 

このため、知的財産権の適切な管理方法を把握しておらず、知財の活用に不安を抱えているご担当者様は多い印象を受けています。実際に、商標関係の業務を任された方の中には、「知財担当者って何をすればいいの?」と疑問を持っている方も多いと思います。
そこで、本稿では、知財担当者のご活躍の参考になるように、商標権の管理方法をご紹介致します。

1. はじめに

商標権の管理はおおまかに以下の二つに分けられます

 

・他社の侵害調査 (知財担当者への手引き1をご覧ください。)

・登録済みの商標権の維持・管理

 

本稿では「登録済みの商標権の維持・管理」に絞って情報をお届けします。

2. 登録済みの商標権の維持・管理

商標権の存続期間は10年間です。商標権は何度でも更新することができ、半永久的に権利を存続させることができます。ただし、更新可能な期間に更新手続きを行わなければ、商標権が消滅してしまうため注意が必要です。
知財担当者は、自社の商標権の存続期間を把握しておく必要があり、必要な商標権はきちんと更新する必要があります。
なお、弊所では手続きのご依頼を頂いた商標権については、更新期限の管理を行っています。更新可能な時期が近づきましたら弊所より案内を送付しています。

3. 権利の見直しについて

商標は、出願する際に、商品・役務(サービス)を指定して出願する必要があります。商標権は、類似する商品・役務に使用する行為にまで効力が及びます。このため、指定する商品・役務は、商標権の権利範囲を定めるものであり、極めて重要な要素です。
また、特許庁はあらゆる商品・役務を45個の区分に分けています。区分の数によって、出願・登録・更新時の印紙代が変動します。

 

事業を継続していく中で、事業範囲が当初予定していたものから異なる範囲に変わっていくことはよくあります。このため、出願時が十分に権利範囲を確保できていたとしても、事後的に商品・役務の範囲が不足していることがあります。また、事業範囲を絞った場合は、出願時の権利範囲を比べると不要な商品・役務があるかもしれません。

<例1>商品・役務が不足している場合

出願当初は中華料理の飲食店の屋号として使用していたため、第43類「飲食物の提供」のみを指定していた。その後、人気店となったため、食品メーカーと業務提携をして、スーパーで販売される餃子のチルド商品も展開するようになった。

→この場合、第30類「餃子」等の商品についても権利化する必要があります。

<例2>不要な商品・役務がある場合

出願当初はアパレルブランドとして、第25類「被服」、第18類「かばん類」等を指定して出願していた。事業を継続していく中で、「被服」の製造に力を入れることになり、「かばん類」の製造は行わなくなった。

→この場合、第18類「かばん類」については更新を行わないという選択肢を取っても良いです。ただし、もちろん防衛目的で権利を維持する価値は十分にありますので、費用対効果でご検討下さい。

商標権の指定商品・役務の内容と、実際のビジネスの範囲を照らし合わせて、不足しているまたは不要な商品・役務がないか否かをチェックすることをお勧め致します。

不要な区分を削除して更新することで、権利の維持費用を抑えることが出来ます。

不足している商品・役務がある場合には、気づいた時点で速やかに商標出願して頂くことをお勧めします。商標は先願主義を採用していますので、第三者が先に出願されてしまうと、当該商品・役務について商標を使用できなくなるおそれがあります。

 

登録した商標について流れ作業的に更新手続きを行うのではなく、改めて自社の商標権の権利範囲を確認して頂くことをお勧めします。更新のタイミングは、区分の増減を検討するチャンスともいえます。

4. 不使用状態の確認

商標には、不使用取消審判という制度があります。不使用取消審判とは、3年間継続して登録商標と「社会通念上同一の商標」を使用していないときに誰でもその登録を取り消すことが出来る制度です。

「社会通念上同一の商標」を使用しているか否かについては、実務上厳しく判断される傾向があります。

特許庁の公開している審判便覧において、「社会通念上同一の商標」に該当するか否かの例示がされています。

以下一部を抜粋します。

 

・社会通念上同一の商標と認められる例

登録商標
使用商標
學藝
学芸
HI-KE
hi-ke
スクール
school
はつゆめ
初夢

 

・社会通念上同一の商標と認められない例

登録商標
使用商標
チョコ
ちょこ
ホール
hall
ようせい
妖精
音楽
music
引用:特許庁ウェブサイト「審判便覧」より

実際に特許庁の審判便覧を見て頂ければ分かると思いますが、「社会通念上同一の商標」に該当するか否かの判断は様々な視点から検討を行う必要があり、高度の実務知識が求められます。

事業を継続する中で、10年間経つとロゴが変わったりすることも多いと思います。古いロゴ商標をそのまま更新していると、不使用取消審判を請求された場合に、使用の立証が出来ずに権利が消滅する可能性もあります。

このため、ロゴの変更があった場合には、速やかに弁理士などの専門家に相談の上、商標の出願をご検討頂くことをお勧めします。

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