アメリカ
アメリカで商標登録を行う場合の実務的な留意点についてご説明しています。
当該ページは2022年10月に作成したものです。
概要
●概算費用
調査費用 | 約25~40万円 |
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出願費用 | 約30万円 |
登録費用 | 約12万円 |
※1 1区分の商品又はサービスを指定した場合の概算費用です。詳細はお問い合わせ下さい。
※2 アメリカでは使用主義という考え方を採っています。先に出願した人ではなく、先に使用した人に権利が発生するという考え方です。アメリカでの商標調査は簡易調査と詳細調査の2種類があり、調査内容によって費用が大きく変動します。簡易調査は、特許庁で登録・出願された商標のみが調査範囲であり、詳細調査はアメリカにおける現実の使用も調査範囲に含まれます。権利の有効性を厳格に確認したい場合には、詳細調査を行う必要があります。
●期間
調査期間 | 1週間~1ヵ月 |
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審査期間 | 約8.5ヵ月 |
存続期間 | 登録日から10年間 |
※1 調査期間は依頼する現地代理人によって異なります。
※2 審査期間は特許庁の審査状況によって変動しますので、上記期間は参考情報としてご確認下さい。
●マドプロ出願
マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録出願(マドプロ出願)が可能です。
1.出願
- 委任状は不要です。
- 標準文字による出願が可能です。
標準文字の宣言が出来るのは一定の文字に限られており、漢字・ひらがな・カタカナは標準文字の宣言を行うことができません。 - ラテン文字以外の商標を出願する場合には、翻訳を記載する必要があります。
- 図形要素を含む商標を出願する場合には、図形要素の説明を記載する必要があります。
- 指定商品・役務について
ニース協定に基づく国際分類表を採用しています。
多区分出願が可能です。 - 出願人の名称及び住所について
出願人の名称及び住所は英語で表記する必要があります。
2. 審査
- 平均審査期間は約8.5か月程度です。※
早期審査制度はあります。ただし、訴訟提起されている場合等の一定要件下に限られます。 - 拒絶理由通知への応答期限は6ヶ月です。
- 相対的拒絶理由は審査の対象です。
- コンセント制度が導入されています。
他人の商標と類似することが理由で拒絶理由通知がされた際に、権利者からコンセントの了承を得ることで審査を有利に進めることが出来ます。 - ディスクレーム制度が導入されています。
出願商標の一部に識別力のない部分がある場合に、当該部分についてのディスクレーム(権利不要求)を行うことが出来ます。
ディスクレームの要否は審査官により審査されます。 - 原則として一度の拒絶理由通知で全ての拒絶理由が通知されますが、複数回に分けて拒絶理由が通知されることがあります。
3. 公告
審査官が出願商標の登録を認めても良いと判断した場合には、出願公告がされます。
出願公告がされた後、30日間、第三者からの異議申立を受け付けています。
公告期間の経過後、異議申立がない場合及び異議申立が不成立の場合に、登録を受けることが出来ます。
4. 登録後
存続期間は登録日から10年です。
存続期間満了日の12ヶ月前から更新手続きが可能です。
公告期間の経過後、異議申立がない場合及び異議申立が不成立の場合に、登録を受けることが出来ます。
出願時もしくは登録後6ヶ月以内に、商標の使用宣言書を提出する必要があります。
また、登録後5~6年目の間、登録後9~10年目の間、その後10年ごとに商標の使用宣言書の提出が必要です。
商標の使用宣言書には、商標の使用証拠を提出する必要があります。
ただし、マドプロ出願の場合には、出願時の使用宣言書に使用証拠を添付する必要はありません。
登録から5年間継続使用され、現に取引において使用されている商標は、商標権の不可争性についての宣言書を提出できます。
通常、未登録先使用の商標が存在する場合、商標登録が取り消されますが、当該宣言書を提出することで、有効性について争うことが出来なくなり、取り消されなくなります。
5. 審判
- 不使用取消審判制度があります。
登録商標が3年以上継続して使用されていない場合に、登録の取り消しを請求することが出来ます。
6. その他
- アメリカにおいて登録商標であることの表示(Rマーク)は義務付けられていませんが、登録商標表示をしていなかった場合には、損害賠償の請求が出来ません。このため、アメリカで商標を使用する際には、Rマークを付けて使用して頂くことをお勧め致します。
なお、登録商標以外のものにRマークを付ける行為は罰則が科せられる可能性があります。登録商標と類似のものにRマークを付けるのは避けて頂き、登録商標と同一のものにRマークを付けて頂くようご注意下さい。
登録商標以外の商標に対してはTMマーク、SMマークの使用をご検討下さい。 - 商標の指定商品・役務は権利範囲を定めるものであるため、商品・役務の記載は明確である必要があるところ、アメリカでは「ソフトウェア」のように包括的な表現は明確な商品の表示として認められていません。アメリカで出願する際には、「製図用ソフトウェア」のように用途を記載する必要があります。このため、一部の商品・役務の分野においては、日本での出願よりも、お客様のビジネスを詳しく伺う必要があります。
- 日本を含むその他の多くの国と異なり、アメリカでは一定期間ごとに商標の使用証拠を提出する必要があります。このため、登録商標と使用商標の同一性には他の国よりも注意して使用することをお勧めします。また、商標の使用証拠を積極的に残して頂くことをお勧めします。
- アメリカでは標準文字の宣言をして出願をすることが出来ます。この制度は日本の標準文字制度とは性質が異なります。
アメリカにおいて標準文字による標章とすることを宣言しなかった場合、出願書類に表示されている通りのフォントしか保護対象とならないため、狭い範囲の保護となると考えられます。
一方、標準文字による標章とすることを宣言した場合、フォントが変わっても、デザイン要素が加わっても、文字部分は保護され、アメリカで最も広範の保護を得られると考えられています。 - 識別力を有しない商標(商品・役務の普通名称、品質表示等)は商標登録を受けることが出来ません。しかし、識別力を有しない商標であっても継続使用をすることで識別力を獲得することがあります。
アメリカでは、補助登録という制度があり、識別力が弱い言葉であっても登録を受けることができ、継続使用の結果識別力を獲得した場合には主登録へ切り替えることが出来ます。補助登録をすることで、後願を排除する効果等を得られます。
ただし、アメリカにおいて現に使用を開始しており、外国で登録された商標権を基礎にして出願していること等の要件が課せられます。
識別力が弱い商標の出願をご希望の場合には、補助登録の申請もご検討下さい。
なお、マドプロ出願の場合には、補助登録の制度は利用出来ません。
本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別具体的な事案に関する助言を想定したものではありません。
本記事は、作成時点の情報に基づくものであり、最新の情報ではない場合があります。
また、本記事によって生じた損害について一切の責を負いません。
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