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商標登録の基礎知識

商標登録の基礎知識

指定商品・指定役務の決め方

 

商標登録出願は、その商標を使用する商品又は役務(サービス)を指定して行います。このとき指定した商品を「指定商品」、指定した役務を「指定役務」と呼んでいます。商標権の効力は、指定商品・指定役務と同一又は類似の商品・役務における商標の使用に及ぶことから、どの商品・役務を指定するのかという選択は、商標登録出願における非常に重要な事項の一つです。

 

商品・役務の指定は自己責任

特許庁の審査官は、商標登録出願の願書に記載された内容を審査しています。願書の記載内容が法律に定められた一定の条件を満たしているか否かを淡々と判断するのが審査官の仕事であって、出願人が本当は何を希望しているのかというようなことは審査官には関係のないことです。

このため、出願人のビジネスとは無関係の商品・役務を誤って指定したとしても、そのことを審査官が指摘することはありません。出願時に適切な商品・役務を指定することは出願人の自己責任であり、商標登録を受けることができたから安心とは限らないのです。出願前に信頼できる専門家と十分相談し、適切な商品・役務を指定して出願を行うことが重要です。

指定商品・指定役務が適切でない場合

適切な商品又は役務を指定していなければ、商標登録を受けたとしても全く見当違いで意味のない権利を取得することになります。その結果、商標登録後に次のような問題が発生することが考えられます。

 

権利行使上の問題

他人に対し権利行使をしようとした時点で、その他人の行為に商標権の効力が及ばないことが判明する場合があります。商標権の効力範囲は、指定商品・指定役務と同一又は類似の商品・役務の範囲内であるため、その他人が商標を使用している商品・役務がこの範囲外であれば権利行使をすることはできません。せっかく商標登録していても全く無意味であったということが肝心な時に初めてわかるという笑えないような状況です。

 

取り消されるリスク

商標権者は、登録商標を指定商品・指定役務に使用する義務があります。このような義務違反の状態が3年間継続している場合、その登録を取り消すことができる不使用取消審判制度というがあります。このため、見当外れの商品・役務を指定して商標登録を受けていた場合、その登録が取り消されるリスクがあります。

 

指定すべき商品・役務について

例えば、商標の使用方法として、ポケットティッシュにエステサロンの広告チラシをはさんで配布する場合、指定すべき商品・役務は第16類の商品「ポケットティッシュ」でも、第35類の役務「広告」でもありません。指定すべき商品・サービスは第44類の役務「美容」です。

なぜなら、エステサロンの広告チラシをはさんだポケットティッシュは、美容サービスを提供しているエステサロンの広告目的で配布されるものであり、サービスの広告物に商標を付して頒布する行為は商標の使用に該当すると規定されています(商標法2条3項8号)。

これに対し、第16類の「ポケットティッシュ」は商品としてのポケットティッシュについて商標登録する時に指定すべき商品です(例えば、大王製紙株式会社の商標「エリエール」)。また、第35類の「広告」は他人(広告主)のために提供する広告サービスについて商標登録する場合に指定すべきサービスです(例えば、株式会社博報堂の商標「博報堂」)。

商標登録をする際、どの商品・役務を指定すべきかは、その商標をどのような商品・役務の目印として使用するのかによって判断します。実務上は微妙なケースもありますが、そのような場合には、その商品・役務は有料なのか、また、役務であれば、その役務が他人のために行われるサービスであるのかなども考慮して判断します。

 

具体的な商品・サービスについて

よくお問い合わせを頂く商品・サービスの区分を以下にご案内致します。なお、昨今では様々な商品・サービスが提供されているため、どこかの区分に必ず合致するとは言えず、複数の区分に該当する商品・サービスもあります。原則としては、一般需要者等がどのような商品・サービスとして捉えるか、また、どのような売り場で販売するか等を考慮して商品・サービスを決めていく必要があります。また、商品・サービスの提供方法により指定する区分が異なる場合もあるため、注意が必要です。

 

(1)アパレル商品の場合

アパレル商品の場合、必要に応じて次のような商品を指定して登録します。

第25類:洋服,靴類,靴下,手袋,ベルト
第18類:かばん類
第14類:指輪,ピアス,ネックレス等の身飾品
第26類:シュシュ,ヘアバンド等の頭飾品

 

(2)飲食店の場合

レストラン等の飲食店の場合、食事を楽しませるサービスである「飲食物の提供」を指定して商標登録します。ただし、飲食店で行われるテイクアウト販売は、食事を楽しませるサービスではなく、商品としての飲食物の販売です。従って、テイクアウト販売であれば、テイクアウトする商品(例えば、ハンバーガー)を指定して商標登録する必要があります。

第43類:飲食物の提供
第30類:すし、たこ焼き、ハンバーガー、ピザ

 

(3)美容室・エステサロンの場合

美容室・エステサロンの場合、「美容」サービスを指定して商標登録する必要があります。また、オリジナルの化粧品やシャンプーを販売している場合には、その商品(例えば「化粧品,シャンプー」)も指定して商標登録する必要があります。

第44類:美容
第3類:化粧品,シャンプー

 

(4)プログラム(ソフトウェア)の場合

プログラム(ソフトウェア)の場合、提供する方法により指定すべき商品・役務が異なります。具体的には、CD-R等の媒体で販売されるプログラムやダウンロード販売されるプログラムは商品であり、第9類の「電子計算機用プログラム」を指定して登録する必要があります。一方、ASPサービスのようにサーバー上でプログラムが動作する場合は、プログラムを使用させるサービスであり、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」を指定して登録する必要があります。オンライン上で提供されるゲームのプログラムや電子出版物もダウンロードにより提供するか否かにより、指定すべき商品・サービスが異なります。

 

(5)ゲームの場合

第9類:電子計算機用ゲームプログラム
第41類:オンラインによるゲームの提供

 

(6)電子出版物の場合

第9類:電子出版物
第41類:電子出版物の提供

 

作成2016.11.29(FK)

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