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商標登録の基礎知識

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海外商標の冒認対策(2)

1. 世界的に有名なシューズブランドの冒認の事例

ニューバランス社(New Balance)は中国において、中国語で「New」の意味を表す漢字の「新」と、「Balance」の中国語音訳の「百伦(Bailun)」とを組み合わせた「新百伦」を使用していました。
しかしながら、中国語表記の「新百伦」について権利化しておらず、中国企業に「新百伦」の商標権を先取りされてしまいました。
中国企業がニューバランス社の「新百伦」の使用に対して商標権侵害の訴えを起こしたところ、裁判所は中国企業の主張を認め、ニューバランス社は敗訴し損害賠償の支払いを命じられました。

 

このような「冒認商標」によって他者に権利を取られてしまうと、真の権利者であっても後から対策することは大変に困難であり、事前の権利化が重要です。 ※

 

※「冒認商標」とは、海外において正当な権利を有しないものによって出願された商標のことです。

 

2. 各国の取引状況を把握する重要性

海外展開といえば、真っ先にブランド名の英文字での展開を考えることが多いかと思われます。

しかしながら、例えば中国では、英文字表記より漢字表記のほうが親しまれている実情があります。中国の市場における海外ブランドの宣伝広告では、英文字表記の近辺に漢字表記が併記されているためです。

(1) 中国におけるブランド名の表記のパターン

ブランドの中国語表示には、いくつかのパターンがあります。

 

(a) 漢字変換パターン :日本語漢字を中国語漢字に変換する

日本語表記中国語表記
豊田(トヨタ自動車)
丰田
東芝
东芝
東陶(TOTO)
东陶

 

(b) 発音変換パターン :元のブランドの音に近い中国語を当て字として表記する

原語表記中国語表記
SONY
索尼(Suoni)
SUNTORY
三得利(Sandeli)
Google
谷歌(Guge)

 

(c) 意味変換パターン :ブランドの意味合いから中国語に変換する

原語表記中国語表記中国語の意味
Apple
苹果
りんご
アサヒビール
朝日啤酒
啤酒=ビール

 

(2) 英文字表記のブランド名の権利化だけでは安心できません

中国の審査実務では、「発音変換パターン」「意味変換パターン」のような英文字・仮名表記と中国語漢字表は、原則として類似しないものと扱われます。
すなわち、英文字商標について権利化を行っていても、中国語漢字表記の商標を「冒認商標」として第三者に権利化されてしまった場合、最悪の場合上記の事例のように侵害事件にまで発展する可能性も考えられます。

 

例えば、東京スカイツリーを運営する東武鉄道社は、東京スカイツリーの中国語表記として「東京天空樹」の表記を検討していました。しかしながら、中国で「天空樹」が先取りされてしまい、中国語表記を「東京晴空塔」に変更しました(「晴空塔」中国商標登録第10287349号等)。

 

このように、英文字表記のブランド名の権利化のみならず、中国語やハングル等の現地の言葉での表記や、現地における愛称についても注意が必要です。

 

3. 今すぐに行うべき対策

各国によって、商標制度や商標の類似の判断基準、商慣習は異なります。また、日本の商標権は日本国内でのみ効力を有します。海外にブランド展開を行う場合、展開を行う各国において、現地の状況に合わせた商標権を取得する必要があります。

 

各国の商標制度や商習慣を勘案して、第三者に「冒認商標」で先取りされないように、漏れのない内容で戦略的に商標権を取得する「ブランド管理」が重要です。現地で使用する言語での表記、愛称、略称、キャラクター、図形などについて、網羅的に商標権を取得することが適切であると考えられます。

 

特に、中国のように英文字表記の馴染みが薄い国では、現地の言葉での表記について初期の段階で商標出願すべきであるといえます。

 

ユニクロを運営するファーストリテーリング社の中国における「ブランド管理」の例

商標
中国商標登録番号
商標の性質
UNIQLO
第791494号
ブランド名
UNIQLO(ロゴ)
第64596051号
ブランドロゴ
优衣库
第3012401号
「UNIQLO」の中国語表記
YOUYIKU
第41450076号
「优衣库」の中国語発音
FAST RETAILING
第44498119号
社名
迅销
第59816092号
社名の中国語表記
迅销
FAST RETAILING
第49849434号
社名(中国語+英文字)
柳井正
第45405079号
代表者氏名

 

 

外国への商標出願の概要については、

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